脱炭素へ 多様化する二酸化炭素回収技術を解説

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脱炭素社会の実現に向け、二酸化炭素を回収する技術が注目されています。今回は、ネガティブエミッション技術(NETs)とも呼ばれる二酸化炭素技術について、さらに詳細を解説します。
CCUSとDACの違いについては、こちらの記事をご覧ください。

  1. 二酸化炭素回収技術の種類
  2. バイオマス利用
  3. 工学利用
  4. 風化利用
  5. 海洋利用

二酸化炭素回収技術の種類

引用:NEDO

二酸化炭素回収技術は、大きく「バイオマス利用」「工学利用」「岩石などの風化利用」「海洋利用」の4つの分野にわけることができます。

バイオマス利用

バイオマス分野は、さらに3つの方法に分けられます。

植林・再生林 :最も身近な方法です。木を植えて新たに森を作ったり、自然や人の活動によって減少した森林を復活させる取り組みです。

土壌炭素貯留 :バイオマスを土壌に貯蔵・管理する技術です。土壌有機物は、養分を作物に持続的に供給するために極めて重要な役割を果たしており、農業生産性の向上・安定化に不可欠です。 農地に施用された堆肥や緑肥等の有機物は、多くが微生物により分解され大気中に放出されるものの、一部が分解されにくい土壌有機炭素となり長期間土壌中に貯留されます。

バイオ炭 :バイオマスを炭化し炭素を固定する技術です。バイオ炭は、生物質を高温で加熱し、酸素のほとんどがない状態で分解・炭化させて得られる炭素含有物です。この過程は「炭化」と呼ばれ、木材や農業廃棄物、動物の排せつ物などの有機物を使って行われます。

引用:Climeworks

工学利用

BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage):
再生可能エネルギーとしてのバイオエネルギーを利用しつつ、その過程で排出されるCO2を回収・貯留してネットのCO2排出量を負にすることを目指す手法です。この技術は、地球温暖化対策の一環として注目されています。
DAC(Direct Air Capture):
既存の排出源を変更せずに大気中のCO2を回収・処理することで、二酸化炭素排出量を削減しようとする手法です。再生可能エネルギーやバイオマス利用とは異なり、既存の産業プロセスやエネルギー発生方法に組み込むことができるため、地球温暖化対策の幅広いアプローチの1つとして検討されています。詳細はこちらの記事へ

風化利用

風化促進は、地球温暖化対策の一環として提案されている技術の一つです。この技術では、特に玄武岩などのマグマが冷えて固化した岩石を粉砕し、微細な粒子として散布することにより、風化を人工的に促進し二酸化炭素(CO2)を大気から吸収させることを目指します。現段階では、この技術は地球温暖化対策の1つとしての有望性が示唆されているものの、実用化には時間と研究が必要であると言えます。

海洋利用

海洋利用は、さらに3つの分野に分けられます。また、海洋肥沃・生育促進、植物残差海洋隔離の2つについては、特に「ブルーカーボン」と呼ばれることもあります。

海洋肥沃・生育促進:
海洋に養分(栄養塩や肥料など)を散布したり、優良な生物品種を導入するなどの手段を使って、海藻などの生物学的生産を促進し、二酸化炭素(CO2)の吸収・固定化を人工的に加速させる技術です。この技術により、海洋の生物が増加し、それに伴ってCO2の吸収量が増加することが期待されます。

植物残差海洋隔離:
海洋中で植物残渣に含まれる炭素を半永久的に隔離する方法です。植物残渣は、例えば農業の残渣や林業の廃棄物などが含まれます。これらの植物残渣に含まれる炭素を海洋に投入することで、それが自然分解されることなく、長期間にわたって海洋中に留まります。このようにして、CO2の海洋中での増加を防ぐことができます。

海洋アルカリ化:
海洋アルカリ化は、海水にアルカリ性の物質(例:アルカリ土壌や酸化カルシウムなど)を添加することで、海洋の自然な炭素吸収を促進する炭素除去の方法です。アルカリ性の物質を添加することで、海水のpHが上昇し、海洋の酸性化が緩和されます。酸性化を緩和することで、海洋中のCO2の溶解が増加し、海洋がより多くのCO2を吸収する能力を持つようになります。

いずれの方法も長所と短所があり、現在も研究開発が進められています。
ネガティブエミッション技術(NETs)と呼ばれるこれらの技術は、脱炭素社会の実現に向けて重要な役割を担います。また、こうした技術で回収された二酸化炭素の一部は、カーボンクレジットとして市場で販売されています。

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